阪神淡路大震災から震災遺児支援のボランティア活動に細々関わって

【贋怪談徒然日記(2630)】

★某月某日

阪神淡路大震災から震災遺児支援のボランティア活動に細々関わっていて、昨年の福島にも休日を利用して出張っていたりした。

夏になり、仕事が繁忙期に入ったのと、現行の活動内容に一定のめどが立ったのもあって、しばらく活動から距離を置いていた。

そして少し前、福島での活動を通じて知り合った人から、よければ手伝って欲しい事があるとメールが来た。

諸事情あって今は福島へ通う余裕が無いと返答したら、いや福島へ行く必要は無い。あなたのお住まい(相手は俺の住所を知っている)からそれほど時間がかからない場所だと。

それならば話だけでも伺いますと返事したら、紹介したい人がいると返事があり、会うことに。

とりあえずA氏としておく。彼とは喫茶店で合流し、そして俺に説明した。

端的に言えば、震災で保護者を失った子供達をこの近く(この近辺では一番大きな市)に呼び、レジャーランドに招待したり一緒に食事会を開いたりして親睦を深めようというもので、A氏が主催をつとめるボランティア団体がそれを取り仕切る、というものである。「会員制のあしながおじさんみたいなもの」とAは言った。

当然だが子供達の交通費、食費などは会員が払う会費から捻出される。食事代は顔なじみの店に話がついており、まとまった人数が見込めるのでリーズナブルでそれなりに贅沢な内容に出来る、と。

ボランティア歴がそこそこ長いので、こういった寄生虫のような連中は嫌と言うほど見てきた。ワードかエクセルで作られたようなパンフレットの最初の1、2ページを見た時点で断る気満々で居たら、Aはその空気をかぎ取ったのか、俺に別の紙切れを見せてきた。

『第一回親睦会』の参加予定者の名簿なのだが、全て小学生〜中学生とおぼしき女児で、顔写真とセットで名前と年齢が記載されており、備考欄に「千円くらい」とか「1万円」などと書いてあった。

そしてAは声を細めてこう言った。

「最近の子供というものは色々と入り用なようで、『お小遣い』などを欲しがっている子もいますし…」

「一応、『食事会』は20時までという事になっていますが、迎えのマイクロバスは翌日にもう一度来ますので…」

「秘密は厳守しますのでご安心ください」

『名簿』の中には俺が見知っている子もいた。当時小学五年生で、震災で父親と弟(妹だったかも)を自宅もろとも失った子だった。ただ、名簿の名前は別名だった。

『会費』の額が額なのでちょっと考えさせてくださいとだけ答え、見せられたパンフレットを受け取り、Aとは喫茶店でそのまま別れた

『名簿』も要求したが「今はこれ一部しかありませんので」と渋られたため、入手は出来なかった。

以上を洗いざらいぶちまけたつもりだったが、生活安全課の職員の反応は淡々としていた。

「情報提供ありがとうございます」「調査いたします」とだけ。

この顛末を冒頭のメールを送ってきた人に伝えると、涙ながらに謝ってきた。

「そんな事をする人だとは知らなかった」「子供達をとんでもない事に巻き込んでしまった」と。

知っている限りの人にこのことを伝えてくれと言い、そのまま電話を切った。

後日、パンフレットに載っていたボランティア団体の住所を訪れてみた。空きテナントだった。

あれから新聞やネットのニュースをチェックしているが、Aの名前は今のところ見ない。次会ったら死なす。

Sさんからの投稿。